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【川越市】夏休みの「体験格差」をどう埋める? 子どもの“やってみたい”を諦めさせないために

2026/7/16

夏休みは、子どもたちにとって普段できないことに挑戦できる貴重な期間です。

旅行に出かける。自然の中で遊ぶ。スポーツや工作に挑戦する。博物館や美術館へ行く――。

一方で、こうした体験の機会は、家庭の経済状況や保護者の働き方、送迎できる人がいるかどうかによって大きく変わります。

これが、いわゆる「体験格差」です。

お金だけではない「体験できない理由」

公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの全国調査では、直近1年間に学校外の体験がなかった小学生の割合は、世帯年収300万円未満の家庭で29.9%、600万円以上では11.3%でした。

さらに、子どもが希望する体験をさせてあげられなかった保護者に理由を聞くと、年収300万円未満の家庭では、

  • 経済的な余裕がない:56.3%
  • 送迎や付き添いをする時間がない:51.5%
  • 家の近くに参加できる活動がない:26.6%

となっています。

つまり、参加費を無料にするだけでは解決しません。保護者の就労環境、開催場所、移動手段、付き添いの必要性などが重なっています。子どもの「体験格差」実態調査

川越市でも、はっきりと格差が表れています

これは全国だけの話ではありません。

川越市が令和5年度に実施した「子ども・若者の意識と生活に関する調査」では、博物館・科学館・美術館などへ行く機会が「金銭的な理由でない」と回答した小学5年生の割合は、次のとおりでした。

世帯の状況金銭的な理由で機会がない
困窮層23.7%
周辺層6.3%
一般層0.5%

困窮層では、一般層の約47倍です。

また、そもそも「行く機会がある」と答えた割合も、困窮層では33.9%、一般層では56.2%でした。

家庭環境によって、子どもが文化や学びに触れる機会が大きく異なることが、川越市自身の調査からも分かります。川越市こども計画

川越市は、体験格差を政策課題として認識している

2024年5月発行の川越市議会だよりでは、生活困難層の子どもの体験活動について質問がありました。

市は、家庭の経済状況などによって体験格差が生じていると認めたうえで、市の調査結果を踏まえ、参加機会につながる施策を検討したいと答えています。川越市議会だより・令和6年5月1日号

その後、2025年度から2029年度までの「川越市こども計画」には、「こどもの体験活動等への参画支援」が明確に位置付けられました。

主な事業として、

  • 子どもの文化芸術体験事業
  • スポーツ教室
  • ジュニアスキー教室
  • 博物館のこども体験教室
  • ジュニアアートスクエア
  • 青少年交流事業「少年の翼」
  • 放課後子供教室

などが挙げられています。

2026年の夏も、さまざまな体験機会があります

川越市では2026年夏も、公民館、博物館、美術館などで子ども向け事業が企画されています。

例えば、中央公民館の「夏休み!チャレンジ体験教室」では、工作、能楽、料理、マジック、卓球、護身術などが用意され、その多くが無料または少額です。中央公民館「夏休み!チャレンジ体験教室」

市立博物館でも、ミニ灯籠づくり、まが玉づくり、昔の遊びなど、川越の歴史や文化に触れる体験教室が行われます。令和8年度・川越市立博物館の体験教室

また、「すくすく かわごえ」では、小学生から高校生までが遊んだり勉強したりできる居場所を開設。市内のこども食堂、フードパントリー、学習支援についても情報をまとめています。川越市のこどもの居場所づくり事業

こうした取り組みは大切であり、今後さらに充実させるべきだと思います。

ただし、「イベントがある」だけでは格差は埋まりません

現在の取り組みには、まだいくつかの課題があります。

体験教室の中には定員が10~20人程度で、抽選になるものがあります。平日の日中に開催されるものや、内容によって保護者の同伴が必要なものもあります。

また、情報を早く見つけ、期限までに申し込める家庭ほど参加しやすいという「情報格差」も考えなければなりません。

市の計画も、体験教室の延べ参加者数や開催回数を主な指標としています。しかし、本当に確認すべきなのは、参加者の総数だけではありません。

「これまで体験機会の少なかった子どもに届いたのか」

ここまで測る必要があると思います。

私が川越市に提案したいこと

私は、家庭の役割をすべて行政が肩代わりすべきだとは考えていません。

一方で、小学生は、自分で参加費を稼ぐことも、遠くの会場へ移動することもできません。子ども自身では変えられない事情によって、「やってみたい」を最初から諦めてしまうことは、できるだけ減らすべきです。

川越市には、次のような支援ができるのではないでしょうか。

1.身近な小学校や公民館で体験できる仕組み

既存の放課後子供教室を活用し、夏休みにも学校や地域の公民館で、文化、スポーツ、科学、農業、職業体験などを実施する。

子どもが自分で歩いて行ける場所なら、保護者の送迎負担を減らせます。

2.「川越こども体験パス」の試行

就学援助や児童扶養手当の対象世帯などを中心に、スポーツ、芸術、ものづくり、自然体験などに使えるクーポンを試行する方法です。

現金給付ではなく、市内の登録事業者や団体で利用できる仕組みにすれば、地域経済や地元の活動支援にもつながります。

3.保護者の付き添いがなくても参加できる枠を増やす

市が安全管理や見守り人材を確保し、子どもだけで参加できる半日・一日型のプログラムを増やす。

共働きやひとり親家庭にとっては、参加費以上に「付き添う時間を確保できるか」が大きな問題です。

4.学校を通じて、全家庭に情報を届ける

市のイベント情報を「夏休み体験カレンダー」として一つにまとめ、費用、対象年齢、地区、保護者同伴の有無などで探せるようにする。

ウェブやLINEだけでなく、学校を通じた紙での案内も残すことが重要です。

5.川越の地域資源を生かす

川越には、歴史、伝統産業、農業、観光、大学、企業、文化団体、スポーツ団体など、豊かな地域資源があります。

企業版ふるさと納税や民間寄付も活用し、行政がすべてを運営するのではなく、地域全体で子どもの体験を支える仕組みをつくるべきです。

体験の数を競わせることが目的ではありません

もちろん、旅行や習い事をたくさんしている子どもの方が優れている、という話ではありません。

子どもに無理に体験を押し付けることも違います。

大切なのは、子どもが「やってみたい」と思ったとき、家庭の経済状況や親の働き方だけを理由に、最初から諦めなくてよい環境をつくることです。

私自身、3歳の娘を育てる親として、これから小学生になったとき、どの家庭の子どもにも新しい世界と出会える機会があってほしいと思います。

子どもへの体験支援は、単なる夏休みの思い出づくりではありません。

川越の子どもたちの可能性を、地域全体で育てていく投資です。

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著者

徳宮 勇気

徳宮 勇気

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肩書 フリーランス / 自衛隊支援協会理事長
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