中島 ゆうたろう ブログ

江東区千石データセンター問題 ―NHK報道で示された「自治体が動くしかない」という結論

2026/5/16

東京都江東区千石3丁目で進む大規模データセンター建設計画が、2026年5月15日に放送されたNHK「首都圏情報ネタドリ!」で全国に紹介された。マンションから最短3.7m、住民663世帯約1,500人が暮らす住宅密集地に、高さ50m、A重油120万L地下備蓄、ガスタービン12機合計35MWの非常用発電機を持つ施設が建設されようとしている。

江東区千石3丁目のデータセンター建設予定地。2026年5月15日放送 NHK「首都圏情報ネタドリ!」より

番組はこの問題を、首都圏で約200カ所進むデータセンター建設ラッシュの代表事例として取り上げた。そして、関係者の発言から見えてきたのは、規制をめぐる構造的な空白の実態だった。

国土交通省「自治体が条例で対応するのが合理的」

番組内で国土交通省はNHKの取材に対し、次のように回答した。

「データセンターと言っても、施設によって設備が異なる。ほとんどの施設で周辺への悪影響は確認されていないため、建築の基準を一律に厳しくすることは難しい。自治体が地域の実情に応じ、条例などで定めることが合理的と考えています。」

国は一律基準を作らない。自治体が地域の実情に応じて対応する。これが現在の国の公式見解である。

「データセンター」という建築物の区分が存在しない

なぜ自治体対応に委ねられるのか。背景には、建築基準法の構造的問題がある。

建築基準法には「事務所」「倉庫」「工場」「店舗」など様々な用途区分があるが、「データセンター」という独立した区分は存在しない。実際には、データセンターは「事務所」または「倉庫」として、自治体によっては「その他用途」として、建築確認申請が行われている。

これが意味するのは何か。住宅地に近接する場所であっても、「事務所」として建てられるなら、建築基準法上は問題なく建設できるということだ。番組に出演したデータセンター研究の専門家・佐藤一郎氏は次のように指摘した。

「建築基準法においてデータセンターという区分がないわけですね。なので、事務所で登録されてしまっているけども、でも事務所とは到底思えないというところがあります。」

法的な区分と実態のズレ。これが、千石3丁目のような住宅地に大規模データセンターが計画される構造的背景である。

環境規制でも「非常用」が除外される

もう一つの規制の空白は、環境関連法令にある。

大気汚染防止法施行規則の附則には、「非常用発電機は当分の間、規制対象から除外する」という規定がある。この規定は1987年に設けられ、38年間にわたって維持されてきた。東京都環境確保条例も同様の構造を持ち、非常用発電機は規制対象から明示的に除外されている。

これらの規制が設けられた1980年代当時、想定されていたのは小型の非常用発電機だった。出力数十kW〜数百kW規模の機械である。しかし、千石3丁目で計画されているガスタービンは1機あたり約2.92MW。町工場の非常用発電機の100倍規模の機械が、12機並ぶ計画である。

現行制度の上では、規模に関わらず「非常用」として整理されれば規制対象外となる。法令の「非常用」というカテゴリは、こうした大規模機器の集積を想定していなかった。

印西市が示した自治体対応の先例

国が動かない、東京都もガイドラインは出したが義務規定なし。では誰が動くのか。番組はその答えとして、千葉県印西市の取り組みを紹介した。

印西市は首都圏のデータセンター集積地として知られる。市内には約30のデータセンターが立地し、市の固定資産税収は5年間で約100億円増えた。データセンター誘致で経済的恩恵を受けてきた自治体である。

その印西市が、住民の声を受けて方針転換を始めた。一部のエリアの都市計画について、データセンターの建設を禁止する案を公開し、別の2つの駅前についても条例改正で制限する方向で検討している。

3月には、印西市内のデータセンター建設について、住民が建築確認の取り消しを求める訴訟も起こされた。データセンター誘致の先進自治体ですら、住宅地での問題を放置できなくなっている。

業界団体も「説明責任不足」を認める

データセンター事業者の業界団体である日本データセンター協会(JDCC)も、2026年5月に「データセンター地域共生ガイドライン」を公表した。番組内で同協会代表は「説明責任を果たしていないことが多い」「このまま行ってしまうと、データセンターは良くないものじゃないかと思われかねない」と述べた。

業界団体自身が、事業者の説明責任不足を認めている。

立場の異なる関係者が、同じ方向を向いた

国土交通省、専門家、業界団体、他自治体。立場も利害も異なるこれらの関係者が、データセンター規制について揃って同じ方向を示した。

「自治体が条例で対応するのが合理的」「自治体が条例を作って場所を制限するしかない」「事業者の説明責任が果たされていない」「ゾーニングが大事」。

国は一律基準を作らない。事業者の自主規制では足りない。基礎自治体が条例で対応する。これが、現時点での落としどころとして、各関係者が共有する認識である。

千石3丁目データセンター計画は、こうした「地域の実情に応じた対応」が問われる事例の一つである。

建築確認申請の最短日は2026年6月7日。残された時間の中で、基礎自治体である江東区がどう動くかが問われる局面にある。


千石3丁目データセンター問題の詳細分析、最新の動きについては、こちらのブログをご覧ください。

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中島 ゆうたろう

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選挙 江東区議会議員選挙 (2023/04/23) [当選] 3,125.076
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