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細野 豪志 ブログ

子どもの脳が危ない――ネット・ゲーム依存を社会は放置していないか

2026/6/18

子どもの脳はいま、かつてない環境に置かれている。

スマホ、動画、SNS、オンラインゲーム。大人でも引き込まれる強い刺激に、発達途上の子どもたちは毎日さらされているのだ。

富山大学の山田正明准教授から、子どものネット依存、ゲーム依存について話を聞く機会があった。あらためて、強い危機感を持った。

WHOはゲーム障害を国際疾病分類に位置づけている。ゲームを自分で制御できず、悪影響が出ても生活の中でゲームを優先する状態は「依存症」だ。

山田先生らの調査によると、日本の小学生のゲーム依存が疑われる割合は5%台に達する。中学生のインターネット依存については、1割前後に及ぶとの報告もある。

子どもに、ネットやゲームをどこまで認めるのか。スマホをいつ持たせるのか。使用制限はどうするか。いまや多くの親の共通の悩みになっている。

デジタル依存が奪うのは、時間ではなく「脳の発達」だ

幼い時期の脳は、発達段階に応じて自己制御、集中力、感情のコントロール、人との折り合い方を身に付けていく。

我慢する。相手の表情を読む。言葉を選ぶ。体を動かす。退屈に耐える。こうした力は、睡眠、遊び、学習、運動、親子の会話、友達とのぶつかり合いの中で育っていく。

その時期に、ネットやゲームへの依存が高まれば、脳と心の成長に必要な経験そのものが削られる。

ネットやゲームは、脳に強い刺激を与え続ける。次々に報酬が出て、退屈しない。失敗してもすぐにやり直せる。現実の人間関係のように、相手の気持ちを読み、言葉を選び、我慢しながら折り合う必要はない。

授業に集中できない。外遊びが面倒になる。注意されると爆発する。友達と仲良く遊べない。寝る時間になってもやめられない。親が取り上げようとすると、激しく反発する。

ネットやゲームへの依存が深まると、子どもたちはこうした状態に陥る。

ゲームがうまくいくと、快楽物質であるドーパミンが大脳辺縁系から大量に放出される。発達途上の子どもは、衝動を抑える前頭葉の働きがまだ十分に育っていない。大人なら「そろそろやめよう」と脳がブレーキをかけられるところが、子どもにはそのブレーキ自体が未発達なのだ。

さらに深刻なのは、ネットに依存する生活が、子どもの脳の発達そのものに影響を及ぼしかねないことだ。発達途上の脳が強いデジタル刺激にさらされ続ければ、自己制御、集中力、感情の調整に関わる脳の機能の成長が妨げられる可能性がある。

山田先生に、こうした危機感は小児科医などの間のコンセンサスかと聞いたところ、「その通りだ」との答えだった。放置すれば、取り返しがつかなくなる。

オンラインゲームは、スポーツやボードゲームとは質的に異なる。スポーツには体力的な限界があり、ボードゲームには終わりがある。しかし、多くのオンラインゲームは、次の報酬、次のレベル、次のイベントが絶えず現れ、利用者を離れにくくする仕組みが組み込まれている。長時間利用を促す設計そのものが、従来の遊びとの大きな違いだ。

脳が強い刺激に慣れてしまい、もっとやりたい、やめられないという状態に陥る。子どものゲーム依存、ネット依存は、大人のアルコール依存やギャンブル依存とよく似た構造を持つ。

臨床医でもある山田先生は「医学的に見れば、16歳までオンラインゲームはやらせるべきではない」と言い切っていた。年齢で一律に線を引くことへの慎重論はあるが、現場で子どもの脳と向き合ってきた医師の言葉には重みがある。

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富山大学の山田正明准教授の資料より抜粋

シリコンバレーの超人気小中学校「ウォルドルフ・スクール・オブ・ザ・ペニンシュラ」は、中学校一年生までIT教育をしない教育方針で知られている。テック企業関係者の子どもも通う学校が、あえてITに依存しない教育を重視していることは象徴的だ。

デジタル技術の最前線にいる人々は、すでに気が付いているのだ。

「多動・暴言・暴力」――保育現場から届く悲鳴

先日、保育園の経営者の皆さんから話を聞く機会があった。

多動な子どもは以前からいた。かつては30人の中に1人いるかいないかだったが、最近数人はいる。

単に落ち着きがないだけではない。友達や先生に暴言を吐く。暴力をふるう。先生の顔に唾を吐きつけるような子どもまで出てきたという。

もちろん、これらは現代社会における家庭環境の複雑化やストレスなど、多様な要因が絡み合っている。しかし、幼児期から強いデジタル刺激にさらされ、親子の会話、外遊び、睡眠、現実の人間関係が削られていることが、自己制御や感情の調整に影響を及ぼしている可能性は高い。

地下鉄に乗っていると、ベビーカーの子どもの目の前にタブレットを置き、自らもスマホに夢中になっている親の姿を目にすることがある。親のスマホ利用が多い家庭ほど、子どものスクリーン利用時間も長くなることが知られている。

仕事、家事、育児と多忙な日々を送る親が、幼い子供におとなしくしていてほしいという気持ちは理解できる。しかし、ネットやゲームには依存性があり、子どもの脳の発達に深刻な影響を及ぼし得るという認識が、社会に広がっていないことに強い危機感を持つ。

子どものデジタル利用の制限に舵を切る世界――フランス・豪州・英国・中国の決断

各国はすでに動き始めている。

フランス
専門家委員会が、3歳未満の子どもをスクリーンにさらさないこと、3歳から6歳も使用を強く制限すること、スマートフォンやSNSについても年齢に応じた制限を設けることを提言した。

フランス大統領府公表の専門家委員会報告書

オーストラリア
16歳未満の子どもが一定のSNSアカウントを持つことを防ぐため、プラットフォーム側に対応を求める制度が導入された。子どもや親を罰するのではなく、事業者に責任を課す設計だ。

オーストラリア政府とeSafety Commissionerより

英国
オンライン安全法に基づき、子どもが利用する可能性のあるサービスに対して、子どもへのリスク評価と安全対策が求められている。問題が起きてから対応するのではなく、サービスの設計段階から子どもを守る方向に進んでいる。

英国政府のOnline Safety Act説明資料と、規制当局Ofcomの子ども保護に関する文書

中国
さらに強い国家主導型の規制を行っている。18歳未満のオンラインゲーム利用は、金曜、土曜、日曜、法定休日の夜1時間に制限されている。実名登録も義務づけられている。

さらに、未成年者のネット保護に関する包括的な条例を施行し、学校、家庭、事業者、端末メーカーに責任を課している。スマートフォンについても、未成年者モードを通じて、利用時間、深夜利用、コンテンツ、課金、保護者管理を一体的に制御する方向が示されている。

中国政府系の公式発表より

2026年6月15日から17日にフランスのエビアンで開催されたG7では、未成年者をオンライン空間でどのように守るかが重要なテーマとなった。子どものネット依存、ゲーム依存はサミットの主要議題の一つになっているのだ。

首脳会談に先立って行われたG7教育相会合では、学校におけるデジタル利用の管理、デジタル・メディア・情報リテラシーの育成、家庭や教師への支援に加え、スクリーンタイムに代わる文化、芸術、スポーツ活動が子どものバランスある発達に不可欠だとされた。

G7デジタル・技術閣僚会合では、青少年のためのより安全・安心なデジタル空間を定義する共通原則が採択された。そこには、年齢確認、セーフティ・バイ・デザイン、保護者向けツール、過度な利用を招く機能への対応、研究者とのデータ共有などが盛り込まれている。

各国は、子どもをデジタル空間に放置しない方向へ動いている。

「家庭の努力」には限界がある:いまこそ政治がルールを作る時だ

香川県ではネット・ゲーム依存症対策条例が制定されるなど、地方自治体の中には規制に動くところが出てきた。

厚生労働省はゲーム依存相談対応マニュアルを作成し、こども家庭庁も青少年のインターネット利用環境について継続的に調査を行っているが、国全体として、子どもの脳と発達を守るための包括的なルールは存在せず、諸外国と比較すると明らかに遅れを取っている。

ネットやゲームを一律に悪者にする必要はない。デジタル技術には、学習、創作、交流、情報収集の可能性がある。ゲームにも、協力、達成感、創造性を育てる面はある。

しかし、子どもの発達よりも、企業の収益や大人の便利さが優先される社会であってはならない。子どもの自由を守るために、子どもを依存から守らなければならない。

子どもの脳は、社会の未来そのものだ。

大人になってから取り戻せるものもあるが、幼少期にしか育たない力もある。集中力、自己制御、感情をコントロールする力、人と関わる力。その土台となる脳の発達は、一度失われれば簡単には取り戻せない。

子どもたちは、自分で自分の脳を守れない。守る責任があるのは社会であり、政治だ。

子どものネット依存、ゲーム依存は、未来の日本を守るための課題だ。私たちは、子どもの脳を守るためのルールづくりからもう逃げてはならない。

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著者

細野 豪志

細野 豪志

選挙 第51回衆議院議員選挙 2026年 (2026/02/08)
選挙区

静岡5区 168,511 票 [当選] 比例 東海ブロック 自由民主党

肩書 衆議院議員/自民党原子力規制に関する特別委員長/自民党南海トラフ地震・富士山噴火対策委員長
党派・会派 自由民主党
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