2026/7/8

共働きやひとり親の家庭にとって、子どもが小学校に上がるタイミングは、大きな不安を伴います。保育園を無事に卒園できても、放課後の子どもの居場所――学童保育(放課後児童クラブ)に入れるとは限らないからです。保育園の待機児童問題はよく知られていますが、その先に「学童の待機児童」という、もう一つの入り口の問題が待っています。これはしばしば「小1の壁」と呼ばれます。
保育園は原則として就学前まで預かってもらえますが、小学校に上がった途端、放課後の預け先を自分で確保しなければならない。フルタイムで働く保護者にとって、放課後の数時間をどう埋めるかは、就労を続けられるかどうかに直結する切実な問題です。
この問題の規模を、数字で見てみます。こども家庭庁の調査によると、全国の学童保育の待機児童は、令和7年5月1日時点で16,330人。都道府県別では東京都が3,360人と最も多く、埼玉・兵庫・千葉・神奈川と合わせた上位5都県だけで、全国の約半数を占めています。
注目したいのは、この数字が減っていないことです。東京都のデータを見ると、学童の待機児童は平成27年(2015年)以降、およそ10年にわたって毎年3,000人を超える水準で高止まりしています。この間、登録児童数のほうは増え続け、令和7年には約14.7万人に達しました。需要は伸び続けているのに、受け皿が追いつかない状態が続いているのです。

ここには、見落とされがちな構造があります。保育園の待機児童は全国的に大きく改善し、「ゼロ」を掲げる自治体も増えました。しかし、保育の受け皿を整えた地域ほど、数年後にはその子どもたちが小学校に上がり、今度は学童の需要増となって表れます。
入り口(保育)の問題が解決に向かうと、時間差でその先(学童)に問題が移っていく――保育待機の改善と学童待機の高止まりが同時に起きているのは、偶然ではありません。就労を続けられるかどうかという点では、保育も学童も同じ重みを持つ問題です。
学童保育に子どもを受け入れるには、ただ部屋があればいいわけではありません。国の基準では、子ども1人あたりおおむね1.65平方メートル以上の専用区画を確保することが求められています。つまり、登録児童が増えれば、それに応じた面積の生活スペースを用意しなければならない。
この「面積」と「専用区画」という条件が、待機児童が生まれる根本的な理由です。学校の余裕教室を使おうにも、その教室が別の用途で埋まっていれば使えない。かといって、子どもたちの生活の場である以上、面積基準を下回る詰め込みは安全面から許されない。需要のある場所に、基準を満たすスペースがない――これが「空きがあるのに入れない」という一見矛盾した状況を生みます。
この行き詰まりに対して、近年広がっているのが「タイムシェア」という考え方です。放課後の時間帯だけ、学校の特別教室(図工室、家庭科室など)を学童の活動場所として借りる。専用の部屋を新たに用意できなくても、時間で区切って場所を共有すれば、実質的な受け入れ能力を増やせます。
実際、待機児童の多い自治体では、タイムシェアを軸にした対策が相次いで打ち出されています。学校施設という既にある資源を、時間の使い方を変えることで活かす発想です。
ただし、タイムシェアにも限界があります。学校の中の教室は数が限られており、しかも本来の授業や学校行事が優先されます。放課後だからといって、いつでも自由に使えるわけではありません。
そこで必要になるのが、「学校の中だけで完結させない」という発想の転換です。学校の敷地や余裕教室にこだわらず、近隣の公共施設、民間の物件、児童館など、地域にある使える場所に目を向けて受け皿を広げていく。実際に受け入れ枠を大きく増やしている自治体の多くは、学校内の整備と並行して、学校外での新設や民間との連携を進めています。
学童の待機児童問題は、「子どもが増えているから仕方がない」という話ではありません。需要のある場所に、基準を満たす場所をどう用意するか――その配置の問題です。場所の探し方を、学校の中から地域全体へと広げられるかどうかが、解決の分かれ道になります。
放課後の居場所は、子どもの安全と、保護者が働き続けられる環境の、両方を支えるものです。入り口の保育だけでなく、その先の学童まで含めて、切れ目のない受け皿をどう整えていくか。これは、子育て世帯が住み続けられるまちであるための、静かで、しかし重要な条件です。
▼この問題を、江東区の具体的な状況に即して掘り下げた記事はこちら
https://y-nakajima.net/archives/1554
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>中島 ゆうたろう (ナカジマ ユウタロウ)>学童保育の待機児童とは|「空きがあるのに入れない」が起きる仕組み