2026/5/5
この記事の要点
・登山に高重量の筋トレは不要。50代に必要なのは重量との勝負ではなく、自分の身体との対話だ。
・ジムは週1〜2回、1回90分。ビッグスリーは60kg×10〜15回×3セットで十分
・登山に直結するジム種目はビッグスリー、レッグエクステンション、レッグカール、アダクション、ラットプルダウン、トレッドミル、ステアクライマーの7種目
・トレッドミルとステアクライマーは傾斜・心拍数を意識すれば、最も実戦的な山岳トレーニングになる
・目的が明確になれば、トレーニングは続く。50代の体は山に応えてくれる
結論から言えば、登山に高重量の筋トレは要らない。登山は最大筋力ではなく、筋持久力と心肺の複合運動だ。

昨年は白馬岳に登った
先日、毛無山(静岡・富士宮 標高1,964m)の登山記を投稿したところ、思いがけず多くの方に読んでいただいた。「50歳から登山を始めるのは遅くない」というメッセージに、共感の声を多数いただけたことは嬉しい驚きだった。
読者からは、こんな声も届いた。「筋トレに明確な目的が生まれた、というところが刺さった」「具体的にはどんなトレーニングをしているのか」。
前回の記事で、私はこう書いた。「筋トレは細々と続けてきた。しかし、山はそれとは違う。登山を本格的に始めてから、筋トレにも明確な目的が生まれた。山で動ける身体をつくることだ」と。今回はその続編として、奥穂高岳(3,190m)を目指す今夏を控えた筋トレメニューを公開したい。
筋トレを始めたのは30代からだ。重量を追及した時期もある。ベンチプレスはスミスマシンで100kg強、デッドリフトは110kgが上がっていた。腰に不安があったスクワットでも90kg。記録が伸びることが楽しく、ジムに行く動機もそこにあった。
登山を本格的に始めてから、筋トレの目的が明確になった。ベンチプレスで何キロ挙げようと、登山には無関係だ。山で必要な筋力は何かを逆算すると、トレーニングの中身が自然と変わってくる。重量を追うトレーニングから、登山で使える体を作るトレーニングへ。
50代に入って腰や膝のけがが怖くなったことも重なり、今は重量との勝負ではなく、自分の身体との対話に変わった。
ジムは少なくとも週1回、できれば週2回。1回90分。国会日程や地元活動の合間を縫っての通いになる。
ジムでのメニュー一覧
ベンチプレス 60kg×10〜15回×3セット 正直、自己満足
スクワット 60kg×10〜15回×3セット 登りで体を持ち上げる
デッドリフト 60kg×10〜15回×3セット 荷物を背負って姿勢保持
レッグエクステンション 10RM×3セット 登りの推進・下りの膝衝撃吸収
レッグカール 10RM×3セット 登りの脚引き上げ
アダクション 10RM×3セット 不安定地でのバランス
ラットプルダウン 10RM×3セット ザック歩行・ロープ場・鎖場
トレッドミル 傾斜15度・心拍130〜140で20〜30分 持久力の基礎
ステアクライマー 心拍130〜140で20〜30分 登り続ける力
ビッグスリーは筋トレの王道だ。今は、3種目とも60kgに重量を落とし、10〜15回×3セット行っている。登山に高重量は要らない。
正直なところ、ベンチプレスは自己満足だ。胸を厚くしても山では役に立たない。それでも続けているのは、ひとえに男のロマンだ。

スクワットは登りで体を持ち上げる動作、デッドリフトは荷物を背負って姿勢を保つ動作と、それぞれ山行と直結する。重要なのは、軽めの重量で関節を痛めずに継続することだ。怪我をして山に登れなくなれば本末転倒。50代の筋トレは継続に価値がある。

大腿四頭筋を集中的に鍛える種目。10RM(10回がきつくなる重量)×3セット。大腿四頭筋は登山で最も酷使される筋肉だ。登りでは、一歩踏み出した脚で全体重とザックの重さを押し上げる。下りでは、着地のたびに体重の2〜4倍ともいわれる衝撃を受け止める。登山者を悩ませる下山時の膝痛も、その多くは大腿四頭筋の筋肉疲労に起因するとされる。

歩き方や装備の影響もあるが、土台となる筋力と筋持久力を備えておくことの意味は大きい。スクワットでは追い込みきれない部位を、ピンポイントで補強できる種目である。
ハムストリングス(太もも裏)を鍛える種目。10RM×3セット。前面の四頭筋ばかり鍛えると筋バランスが崩れ、膝関節を痛める原因になる。登りで脚を引き上げる動作、急斜面で踏ん張る動作にも欠かせない。前後のバランスを取るという意味でも必須の種目だ。

地味だが、登山では極めて重要な部位。10RM×3セット。岩場やガレ場で足場が不安定なとき、体の軸を保ち、片足立ちでバランスを取るのは内転筋の働きだ。日常生活ではほとんど使われないため、意識的に鍛えなければ衰える一方の筋肉。転倒予防という観点でも、50代以降は特に意識して取り組みたい。

背中、特に広背筋を鍛える種目。10RM×3セット。ザックを背負って何時間も歩き続けるには、背中の筋持久力が欠かせない。広背筋が弱いと肩や首に負担が集中し、長時間の歩行で疲労が一気に来る。

加えて、ラットプルダウンはロープ場や鎖場でも有益だ。腕の力だけで体を引き上げようとすると、すぐに腕が悲鳴を上げる。広背筋を使って引きつける感覚を身につけておくと、岩場で安全に体を持ち上げられる。15kg、20kgのザックを背負って稜線を歩き、必要な場面では鎖を握って体を引き上げる──そのための土台がここにある。
心肺機能を維持・向上させる基礎トレーニング。傾斜15度をつけ、心拍数130〜140を維持して20〜30分。これが山岳トレーニングとして最も実戦的な負荷になる。前回の毛無山の記事でも書いたとおり、私のペース配分の目安は心拍数130以下。普段からジムで自分の心拍を確認しておくことが、山での安全につながる。
階段昇降を模した有酸素マシン。心拍数130〜140で20〜30分。これほど登山の動作に近いマシンは他にない。トレッドミルが「持久力」だとすれば、ステアクライマーは「登る筋力+持久力」の複合トレーニング。登り続ける脚を作るには、登り続けるしかないのだ。

ジムに通えるのは週1か週2。だからこそ、不足は日々の家トレで補う。
50代の登山で何より問われるのは、持久力だ。長時間、自分の脚で歩き続ける力。5時間以上、行動しても粘れる脚。ザックを背負って同じ姿勢を保ち続ける体幹。そして、下山時に膝が笑わない大腿四頭筋。これらは特別な施設も器具も要らず、家でできることの積み重ねで作られる。
週1〜2回のジムは集中、毎日の家トレは積み重ね。両輪が回って初めて、50代の体は山に応えてくれる。 生活の中で実行できる家トレのメニューについては、次回の記事で紹介したい。
目的が明確になれば、筋トレは続く。かつての私は、ベンチプレスの記録を伸ばすことに夢中だった。100kgを挙げた瞬間の達成感は、確かにあった。だが、「この筋肉を何に使うのか?」と考えると、ある種のむなしさもあった。

重量を追っていた頃の私
山を始めてから、筋トレが変わった。ジムでの一回一回が、山頂や稜線で絶景に出会うための準備になった。トレッドミルで上げる心拍が、3,000m級の稜線で粘る脚を作る。レッグエクステンションで鍛える大腿四頭筋が、下りで膝が笑わない自分を作る。 目的が明確になれば、トレーニングは続く。続けば、体は応えてくれる。
山は正直だ。準備した分しか、体は応えない。だから今日も、同じメニューを繰り返す。
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