2026/4/10
本日4月1日から施行される「選択的共同親権」。
前回は制度の理念についてお伝えしましたが、今回はその“実効性”について、より踏み込んで検証します。
本稿は、法務省および最高裁判所からの直接の聞き取りをもとに、自治体および裁判所の準備状況を整理したものです。
まず、自治体の対応についてです。
法務省によれば、今回の制度改正にあたり、パンフレットは大幅にリニューアルされ、共同養育計画の具体的なイメージを持てる内容へと改善されています。さらに、全国の自治体向けに39回の説明会を実施し、周知を進めてきたとのことです。
また、いわゆる「連れ去り」に関しても、一方の親が正当な理由なく子どもの居所を変更した場合、義務違反と評価され得る旨が明記されています。
一方で、現場の自治体からの聞き取りでは準備が「4月1日に間に合っていない」
という声があることも明らかです。
ここに、制度設計と現場運用のギャップがあります。
そもそも私は、パンフレットだけの周知では不十分であり、「読まれない・理解されない」という課題があることをこれまでも指摘してきました。
そのため、例えばより直感的に理解できる動画による周知の必要性を提案してきました。
今回、法務省が作成した約6分の解説動画は、まさにその提案を踏まえた取り組みの一つです。これは前進と評価しています。
しかし重要なのは、「作ったこと」ではなく「届くかどうか」です。
現実には、必要な情報ほど当事者に届いていない可能性があります。パンフレットの内容も含め、重要なポイントが分散しているため、利用者が十分に理解できないまま手続きを進めてしまうリスクも否定できません。
さらに、共同親権の運用は単なる戸籍事務ではありません。
DV相談、児童福祉、さらには弁護士やADRといった外部専門家との連携が不可欠です。
自治体には、「手続きの窓口」から一歩踏み込んだ、“支援のハブ”としての役割が求められます。
しかし現時点では、
・どこに相談すればよいのか
・法テラスの対象外となるケースへの対応
・専門家への適切な振り分け
といった機能が十分に整備されているとは言えません。
次に、裁判所の対応です。
最高裁判所からの聞き取りによれば、家庭裁判所では2025年7月以降、全国規模の協議会を複数回開催し、制度施行に向けた準備を進めてきたとのことです。さらに、同年11月には研修所での共同研究を実施し、調停委員に対しても1年間を通じた研修が行われています。
制度を担う側の準備は、一定程度進んでいるという説明でした。
しかし一方で、当事者団体からは
「裁判所関係者に研修が行き届いていない」
との声も上がっており、制度を運用する側と利用する側との間に認識のギャップがあることも浮き彫りになりました。
研修が実施されていることと、それが実際の現場で機能することは別の問題です。調停や審判の現場で、どのように判断され、どのように子どもの利益が守られるのかが問われます。
さらに重要なのは、日本の離婚の約9割が協議離婚であるという現実です。
多くのケースは裁判所を経由しません。
だからこそ、離婚時ではなく、婚姻時や出生時といった、より早い段階での周知が不可欠です。
制度は「知っている人だけが使えるもの」であってはなりません。
制度は整いつつあります。
しかし、それが機能するかどうかは現場にかかっています。
自治体の連携体制、裁判所の運用、そして当事者の理解。
これらがかみ合って初めて、「子どもの利益を最優先にする制度」として機能します。
4月1日はスタートに過ぎません。
施行後の現場の実態を丁寧に検証し、必要な改善を積み重ねていくことこそが、この制度を“生きた制度”にする鍵です。
引き続き、現場の声に基づいた政策提言を行ってまいります。
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ホーム>政党・政治家>池下 卓 (イケシタ タク)>4月1日施行|法務省・最高裁ヒアリングで見えた共同親権の現実。