2026/7/23
ニセコ町視察報告①
―環境・住宅・都市計画・金融・自治を一体で考える持続可能な地域経営―
7月21日、22日の二日間、北海道議会民主道民連合の地球温暖化対策プロジェクトのメンバーのみなさんと、ニセコ町を訪れました。
ニセコ町では、議会視察を含む全てを役場の企画環境課がコーディネートしています。条件の一つとして、ニセコ町内での宿泊が要請されています。普通に「ニセコ」と検索すると、倶知安町になってしまうので、ご留意ください。今回は、宿泊先も、ランチも、ニセコ観光協会さんのページにお世話になりました。
さて、今回の視察では、ニセコSDGs街区「ニセコミライ」をはじめ、準都市計画区域と景観行政、株式会社ニセコまちによる官民連携、新庁舎の環境性能と情報公開、さらに自伐型林業による森林保全と地域経済の可能性について調査しました。
株式会社ニセコまちの村上さんに街区をご案内いただいたほか、宮坂社長、片山前町長、町職員の皆さん、自伐型林業に携わる澤田さんから、それぞれの立場で丁寧にお話を伺いました。
二日間の視察は、住宅、都市計画、景観、金融、自治、森林と多岐にわたる内容でした。本報告では、内容を分かりやすくお伝えするため、前編・後編の二部構成でまとめます。
前編では、景観と土地利用を出発点に、ニセコミライの住宅政策、株式会社ニセコまちによる地域経営、新庁舎、情報公開と自治について報告します。後編では、自伐型林業を中心に、森林を地域資産として守り育てる考え方と、二日間を通して見えてきた北海道への政策的な示唆について整理します。
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◼️景観は「きれいな景色」ではなく、地域の価値そのもの
ニセコ町を歩いて最初に感じたのは、羊蹄山を望む雄大な景観だけではありませんでした。
今回の視察を通して最も印象に残ったのは、「景観は地域の価値そのものである」という考え方です。
景観というと、美しい風景を守るための取組と思われがちですが、ニセコ町が守ろうとしているのは、単なる眺望ではありません。農地や森林、水環境、住宅地、道路、雪処理、そして人々の暮らしを含めた地域全体の環境です。
景観は、観光資源であると同時に、住民の生活環境であり、土地や住宅の資産価値を支える基盤でもあります。一度失われれば簡単には取り戻せないからこそ、町は景観を未来へ引き継ぐべき「地域資産」と位置付けていました。
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◼️準都市計画区域は「規制」ではなく「地域の意思表示」
その考え方を制度として支えているのが、準都市計画区域です。
一般には、都市計画というと開発を規制する制度という印象があります。しかし、ニセコ町で学んだのは、それとは少し異なる考え方でした。
準都市計画区域とは、「この地域を将来にわたって住宅地として守る」「ここは農地として維持する」といった地域の将来像を行政が示し、住民や事業者、金融機関と共有するための仕組みでもあります。
将来どのような土地利用が行われるのか分からない地域では、住民も安心して住み続けることができませんし、金融機関も長期的な資産価値を評価しにくくなります。
一方で、将来像が明確になれば、安心して住宅への投資や長期融資を行うことができます。
人口減少が進むこれからの時代、どこでも自由に住宅を建てられる状態を維持することが、必ずしも住民の利益になるとは限りません。住宅が分散すれば、道路や上下水道、除雪、公共交通、福祉サービスなどの維持コストは増え続けます。
限られた財源の中で、どこを生活圏として守り、どこに公共投資を集中していくのか。その方向性を示すことも、都市計画の重要な役割であることを改めて学びました。
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◼️景観を守るのは「対話」である
ニセコ町の景観行政でもう一つ印象的だったのは、「対話」を重視していることです。
町独自の景観条例では、大規模な開発について構想段階から地域住民との意見交換が行われます。
議論されるのは建物の高さや色だけではありません。
雪の処理、交通、安全性、眺望、周辺住民への影響など、暮らしに関わる様々な課題について話し合い、その内容を計画へ反映させていきます。
さらに、設計者や施工者の名前も公表される仕組みがあり、地域の価値を損なわない責任を共有しています。
行政が一方的に規制するのではなく、住民と事業者が地域の未来を共に考える。この積み重ねが、現在のニセコ町の景観を支えているのだと感じました。
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◼️景観づくりを住宅政策として形にした「ニセコミライ」
その理念を具体的な住宅政策として形にしたのが、ニセコSDGs街区「ニセコミライ」です。
ニセコ町では、世界的なリゾートとして発展する一方、地域で働く人や子育て世帯が住める住宅の不足が大きな課題となってきました。
そこで町と民間が連携して設立した株式会社ニセコまちが中心となり、高性能な住宅を地域に供給する新しい街づくりに取り組んでいます。
実際にモデル住宅を見学し、壁の断熱構造や窓の性能について詳しく説明を受けました。建物は世界水準の高断熱・高気密性能を備え、厳しい冬でも少ないエネルギーで快適に暮らせるよう設計されています。
ここで重視されているのは、建設時の価格だけではありません。
光熱費、維持管理費、健康、快適性、耐久性まで含めた「生涯にわたる住居費」を考えるという発想です。
「100年住み続けられる住宅を地域の資産として残す。」
その考え方は、人口減少時代の住宅政策に大きな示唆を与えるものでした。株式会社ニセコまちが担う「地域経営」
ニセコミライを支えているのが、町と民間が連携して設立した株式会社ニセコまちです。
宮坂社長からは、会社設立の背景や役割について詳しくお話を伺いました。
印象的だったのは、「行政ができないことを民間が担う」という単純な役割分担ではなく、行政と民間がそれぞれの強みを生かしながら、一つの地域課題に向き合う仕組みとして位置付けられていることです。
行政には、公平性や透明性を確保するためのルールがあります。一方で、単年度予算や人事異動、公共調達などの仕組みは、長期的な事業経営や柔軟な投資判断には必ずしも向いていません。
そこで株式会社ニセコまちは、行政が描くまちの将来像を共有しながら、民間の経営手法を生かして事業を展開し、その利益を再び地域へ還元する役割を担っています。
行政を補完する存在であると同時に、「地域の価値を育てる経営主体」として機能していることが、大きな特徴でした。
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◼️「内部補助」という発想
特に興味深かったのが、「内部補助」という考え方です。
ニセコまちでは、二拠点居住者や町外からの移住希望者向けに、高付加価値の分譲住宅を供給しています。
その収益を、地域で働く人や子育て世帯向けの賃貸住宅やシェアハウスの整備に充てています。
つまり、外部から得た利益を、地域住民の暮らしへ再投資する仕組みです。
現在の住宅政策では、公営住宅には所得制限があり、一定の収入がある共働き世帯や現役世代は対象外になることがあります。
一方で、リゾート地では民間住宅の家賃も高騰し、地域で働く人ほど住まいを確保しにくいという矛盾が生じています。
こうした「制度の谷間」に置かれた中間所得層に対して、高性能で適正な家賃の住宅を提供するために、事業全体で収益を循環させる仕組みを築いているのです。
単に補助金に頼るのではなく、自ら利益を生み出し、その利益を地域課題の解決へ振り向ける。この考え方は、人口減少時代の官民連携の新しいモデルとして、大きな可能性を感じました。
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◼️地方への投資を可能にする金融の仕組み
宮坂社長のお話の中で、もう一つ印象に残ったのが「金融」の視点でした。
地方では、どれほど性能の高い住宅であっても、土地の評価が低いことなどから、融資期間が短く設定されるケースが少なくありません。
返済期間が短ければ毎月の返済額は増え、その結果、家賃を高く設定するか、建設費を抑えるしかなくなります。建設費を抑えれば、断熱性能や耐久性も下がり、住宅の資産価値も十分に評価されません。こうした悪循環が、地方の住宅投資を難しくしてきました。
ニセコまちは、この循環を断ち切ろうとしていました。
住宅の断熱性能や耐久性、長寿命化への取組を金融機関に丁寧に説明し、「建物そのものの性能」を適正に評価してもらうことで、30年という長期融資を実現しています。
地方でも、質の高い住宅に安心して投資できる仕組みをつくることができる。そのことを実際の事業で示している点に、大きな意義を感じました。
さらに、片山前町長のお話の中で、最も印象に残った言葉の一つが、「まちは不動産事業者ではない」という言葉でした。
株式会社ニセコまちは、住宅や土地を販売して利益を追求することを目的とした会社ではありません。目指しているのは、景観を守り、高性能な住宅を整備し、地域で働く人が安心して住み続けられる環境をつくることで、まち全体の価値を高めることです。
短期的に土地の価格をつり上げたり、不動産取引そのものを目的としたりするのではなく、住宅や景観、暮らしの質を高めることで、地域全体の価値を育てていく。その結果として、住みたい人が増え、地域への投資が促され、持続可能な地域経営につながっていくという考え方です。
この言葉には、ニセコまちの役割だけではなく、ニセコ町が目指すまちづくりの哲学そのものが込められているように感じました。
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◼️「安さ」ではなく「性能」を選ぶ公共投資
この考え方は、新庁舎にも一貫していました。
実際に見学した新庁舎は、木材をふんだんに使った温かみのある空間でありながら、高い断熱性能と省エネルギー性能を備えています。
延べ床面積は旧庁舎より大きくなったにもかかわらず、灯油使用量は大幅に削減されているとの説明を受けました。
ここでも重視されていたのは、「建設費が安いこと」ではありません。
建物を長く使い続けるための性能、維持管理費、光熱費、そして将来世代への負担まで含めたライフサイクルコストです。
公共施設は、建設費だけで評価されがちですが、本来は数十年にわたって住民が利用する地域の資産です。
だからこそ、必要な性能を明確に示し、その性能を実現できる提案を評価する「性能発注」という考え方を重視しているとの片山前町長のお話が体現された庁舎でもあります。
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◼️情報公開が自治を支える
新庁舎で印象的だったのは、建物そのものだけではありません。
議場は町民ホールとして利用でき、高校生が学習できるスペースも設けられています。また、住民の希望もあり、読み聞かせもできるコーナーが設けられていました。
庁舎は行政だけの施設ではなく、フリーWi-Fiもあり町民の日常や来訪者の居場所としても位置付けられているようです。
さらにニセコ町では、管理職会議や予算編成の資料を積極的に公開し、例えば、スクールバスの費用も含め、さまざまな行政サービスにどれだけの税金が使われているかを町民と共有しています。
限られた財源の中で、何を優先し、何を見直すのか。
その判断を行政だけで抱え込むのではなく、町民も一緒に考えるための情報公開です。
今回の視察を通して感じたのは、景観や住宅性能といった「目に見える政策」を支えている土台は、情報を公開し、住民を信頼し、対話を重ねるという自治の姿勢であるということでした。
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ここまでは、景観と土地利用を出発点に、住宅政策、地域会社による官民連携、金融、新庁舎、そして情報公開と自治について学んだことをまとめました。
一見すると、それぞれ異なる政策分野のように見えます。道議会で、どう議論すべきか悩ましいです。
しかし、二日間の視察を通して見えてきたのは、「地域の価値を守り、育てる」という一本の軸でした。
景観を守ることも、質の高い住宅を整備することも、性能を重視した公共投資を行うことも、情報を公開し住民と対話を重ねることも、すべては地域が将来にわたって選ばれ、住み続けられる町であるための取組です。
一方で、地域の価値を支えているのは、住宅や都市だけではありません。
豊かな森林もまた、水を育み、景観を守り、仕事を生み出す大切な地域資産です。後編では、北海道自伐型林業推進協議会副理事長・澤田さんから伺ったお話をもとに、森林を地域資産として守り育てるという視点からの視察報告を続けます。
※片山前町長が『まちは不動産事業者ではない』と語られたように、森林もまた、短期的な売買や利益だけで価値を測るものではありません。地域の景観や水環境を守り、次の世代へ引き継ぐ地域資産として育てていくという考え方が、自伐型林業にも通じていました。
今日は、力尽きたので、ここまでで。。。












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