大阪市が抱える課題の中で、避けては通れない、
しかし多くの政治家が表面的な議論で済ませてしまっている問題があります。
それが、全国で最も高い水準にある「生活保護受給率」の現実です。
職人の目から見れば、今の大阪の福祉政策は、
「一時的な応急処置」に多額の予算を投じながら、
根本的な「不具合の原因」を修理できていないように見えます。
大阪市には、生活保護を必要とする方が数多くいらっしゃいます。
病気や高齢、家庭の事情など、 個人の努力だけではどうしようもない理由があることは、私も重々承知しています。
しかし一方で、現在の大阪にはもう一つの深刻な「不具合」があります。
それは、私たちが誇る「ものづくり」の現場や、
住まいを守る大工さんといったブルーワーカーの「圧倒的な人手不足」です。
熟練の職人さんが新卒新人と条件のほとんど変わらない求人広告が、
ハローワークには並んでいるのが実際の現状です。
大阪府のデータを見ても、建設業や製造業の就業者は、
1995年をピークに減少の一途をたどっています。
熟練の技を持つ職人が高齢化し、技術継承が途絶えかけている。
外国人育成就労でやってきた方々を、
定年を超えて再雇用された方々が指導している現場を、
もっと広く認知してもらいたいと考えています。
持続可能性のある状況かどうかは、過去最大の黒字倒産件数を見れば、
明らかにこれは、大阪の経済の根幹を揺るがす「重大な故障」です。
AIが進化し、巷ではホワイトカラーからブルーカラーの価値が高まると言われていますが、
手触りのある高水準な技術継承が出来ていなければ、いくら「客観的な価値」があっても、
持続可能じゃないと意味がありません。
私は「是々非々」の立場から、 この二つの課題を同時に解決する「産官学」の新しい設計図を提案したい。
単なる「給付」や「人手不足の解消」で終わらせるのではなく、 「職の創出」と「技術の習得」をセットにした自立支援へと、
議会で議論する時間を大胆に投じるべきです。
具体的には、以下のような三位一体の仕組みを構築します。
まず「産(地場産業)」
人手不足に悩む平野区の町工場や建設現場が、適切な対価で 「実習の場」を提供する。
現場の油の匂いや、ものづくりの手応えを直接肌で感じてもらう。
これは、失業者にとって「社会に必要とされる誇り」を取り戻す一歩になります。
次に「官(行政)」
大阪市が窓口となり、就労意欲のある受給者と現場をマッチングします。
単なる紹介ではなく、適切な対価を援助するために研修期間中の賃金補助や、
資格取得費用のサポートなど、実務的な「修理」を徹底して行なうことを要請します。
そして「学(教育・研究機関)」
地域の工業高校や専修学校、あるいは下水道の劣化予測技術などで実績のある大学と連携し、
「短期間で現場に通用する技術」を習得するための、 科学的で効率的な教育プログラムを開発援助を要請します。
職人の世界も、今は勘と経験だけではありません。
データに基づいた最新の技術指導を「学」が担うことで、
外国人育成就労制度に頼りきりにならない、未経験者でも自信を持って現場に飛び込める土台を作れます。
この「産官学」連携は、失業者や転職者にとっては「自立への道」となり、
企業にとっては「次世代の担い手」の確保になります。
そして行政にとっては、将来的な保護費の抑制と、
地場産業の活性化による税収増という、
非常に「歩留まりの良い」投資になるはずです。
「そんなに簡単にいくわけがない」という声も聞こえてきそうです。
確かに一筋縄ではいかないでしょう。
しかし、これまでの「維新か、反維新か」という政治の対立の中で、
こうした泥臭い、現場の実務に根ざした議論が、 どれほど真剣になされてきたでしょうか。
派手な巨大開発やカジノ事業にエネルギーを注ぐ前に、
まずは「働きたい人」と「技術を求めている現場」の間にある、
制度の目詰まりという不具合を修理するのが先決です。
私は作業着を着て、 現場の最前線で経営の厳しさと技術の尊さを学んできました。
だからこそ机上の空論ではない 「現場の人間が納得できる設計図」が書けると自負しています。
地方議員は国政政党の駒ではありません。
平野区の一人ひとりの人生の重みを受け止め、
市政の不具合を1円単位、1人単位で検証し、修理していく。
ただ単に会議室で数値を見てお金を配って終わりにするのではなく、
誰もがもう一度「自分の腕で、この大阪に住みたい、生きていきたい」という
誇りを持てるような、自立のための道筋を作りたい。
改革の次に必要なのは、新たな改革の看板を掛け替えることではなく、
止まってしまった現場の時計を、実務の力でもう一度動かすことです。
二項対立に疲れた大阪に、 「誠実な計算」と「産官学の情熱」を取り戻しましょう。
それが、職人・中川隆之が目指す、 新しい地方自治の形です。