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【一票から政治を変える②】 市長が一番偉い? | 本庄市から考える二元代表制

2026/7/20

「市長が一番偉くて、市議会議員はその下にいる」

市政に対して、そのようなイメージを持っている方は少なくないと思います。

確かに、市長は市役所組織のトップです。市を代表して政策を発表し、行政組織を指揮するため、市議会議員よりも立場が上に見えるのは自然なことかもしれません。

しかし、地方自治の仕組みでは、市長と市議会に上下関係はありません。

本庄市を含む日本の自治体では、市民が市長と市議会議員をそれぞれ直接選ぶ「二元代表制」が採用されています。

今回は、市長と市議会の関係に加え、東京都議会議員選挙で話題となった地域政党「再生の道」の公約に対する考え方も取り上げながら、地方議員に政策は必要なのかを考えます。

市民が二つの代表を選ぶ「二元代表制」

国政では、国会議員の中から内閣総理大臣が選ばれます。

一方、地方自治では、市長と市議会議員の両方を、市民がそれぞれ選挙で直接選びます。

市民は、

市政を運営する市長

市政の重要事項を審議し、決定する市議会

という二つの代表を選んでいるのです。

市議会議員は市長の部下ではありません。市長も、市議会に対して自由に命令できる立場ではありません。

どちらも市民から直接選ばれ、異なる権限と責任を持つ、対等な代表機関です。

市長は、政策を提案し実行する立場

市長は、市役所職員を指揮し、市の事業を実際に進める「執行機関」の長です。

主な役割は、

・市の政策や事業を企画する

・予算案を編成して議会に提出する

・条例案を議会に提出する

・市役所職員を指揮する

・成立した予算や条例に基づいて事業を実施する

ことです。

例えば、本庄市で新たな子育て支援を始めたり、道路や公園を整備したりする場合、具体的な制度や予算を組み立て、実施する中心は市長と市役所です。

そのため、市長は市政を動かす上で大きな権限を持っています。

ただし、市長が「この事業を行いたい」と考えただけで、何でも自由に実行できるわけではありません。

条例の制定や予算の決定など、市政の重要事項には、市議会の議決が必要です。地方自治法でも、条例、予算、決算などは議会が議決する事項とされています。

市議会は、審議し決定する立場

市議会は、市長から提出された予算案や条例案を審議し、最終的な意思決定を行う「議決機関」です。

主な役割は、

・予算案や条例案を審議し、賛否を決める

・決算を審査し、税金の使い方を確認する

・市の事業や行政運営を監視する

・市民の声や地域の課題を市政へ届ける

・一般質問や委員会を通じて改善を求める

・必要に応じて条例案や意見書などを提出する

ことです。

市議会議員は、市役所職員へ直接命令し、自分の判断だけで事業を始めることはできません。

しかし、だからといって、行政の提案を受け身でチェックするだけの存在でもありません。

地方議員には、住民の意思を代表し、調査や議論を通じて政策を形成していく役割があります。東京都議会も、都議会議員の職務について、都民の意思を代表し、政策を形成することだと説明しています。

「再生の道」が党として政策を掲げなかった理由

2025年の東京都議会議員選挙では、石丸伸二氏が立ち上げた地域政党「再生の道」が、党として共通の政策や公約を掲げなかったことが話題になりました。

候補者募集時の公式ページでは、地域政党として掲げた具体的な共通ルールは「多選の制限のみ」とされ、当選後の任期を2期8年までとする方針が示されていました。

その背景について、所属候補者の一人は、地方議員には基本的に政策の執行権や予算編成権がなく、自ら実現できないことを有権者へ約束するべきではない、議会の中心的な役割は首長を監視し、チェックすることだと説明していました。

この主張は、二元代表制を理解する上で、必ずしも間違っているとは思いません。

確かに、首長と議員では役割が違います。

市長や知事は、行政組織を動かし、予算を編成し、政策を実施します。

一方、議員一人には、行政組織を直接動かしたり、自分の判断だけで予算を執行したりする権限はありません。

選挙の際に、議員候補があたかも自分一人の力で事業を実施できるかのように語ることには、注意が必要です。

それでも、議員候補に政策は必要だと考える

一方で、「議員には執行権がないから、政策や公約を掲げる必要はない」という結論には、私は賛成できません。

市議会には、条例や予算、決算などを審議し、決定する権限があります。

議員は、予算案そのものを編成することはできませんが、提出された予算に賛成するのか、反対するのか、修正を求めるのかを判断します。また、予算以外の議案や条例案を議員側から提出することも可能です。地方自治法上も議員による議案提出が認められており、都議会では実際に議員提出の条例案が審議されています。

つまり、議員候補が政策を掲げることは、

「自分一人でこの事業を実行します」

と約束することではありません。

・どのような課題を重視するのか

・市長の提案をどのような基準で判断するのか

・何を一般質問や委員会で取り上げるのか

・どのような改善を行政へ求めるのか

・必要に応じてどのような条例を提案するのか

という、自分の考え方と判断基準を有権者へ示すことです。

候補者が政策を示さなければ、有権者は、その人が当選後に何を重視し、どのような判断をするのかを十分に比較できません。

そのため私は、議員候補にも政策や理念を掲げることは必要だと考えています。

「実現します」ではなく「どう行動するか」を示す

地方議員の公約で重要なのは、首長と同じような表現を使わないことです。

例えば、議員候補が、

「新しい子育て支援制度を実施します」

とだけ訴えると、自ら行政を動かして制度を始められるような印象を与えてしまいます。

より正確には、

「子育て支援の課題を調査し、必要な制度を一般質問や予算審議で提案します」

「市長から関連予算が提出された際には、必要性や効果、財源を確認して判断します」

「必要に応じて条例の制定や制度改善を議会から求めます」

といった表現が、議員の役割に合っています。

政策を掲げることと、権限を正しく説明することは両立できます。

むしろ、「何を目指すのか」と「そのために議員として何をするのか」をセットで示すことが、有権者に対する誠実な説明ではないでしょうか。

本庄市の子育て支援を例に考えると

例えば、本庄市で新たな子育て支援を行う場合、市長と市役所は、対象者や支援内容、必要な予算、実施方法などを検討し、議会へ提案します。

市議会は、その提案について、

「本当に必要な支援になっているか」

「対象から漏れる人はいないか」

「費用に対して十分な効果が見込めるか」

「一度始めた後も継続できる制度なのか」

といった点を審議します。

課題があれば説明や改善を求め、最終的に賛否を判断します。

議会が可決した後、市長と市役所が実際に事業を行います。

つまり、

市長が提案し、市議会が審議・決定し、行政が実行する。

それぞれが役割を果たすことで、市政は動いています。

市議会が市長に厳しく質問するのは対立なのか

議会中継などで、市議会議員が市長や行政へ厳しい質問をしている場面を見ると、

「市長と議会は仲が悪いのではないか」

と感じる方もいるかもしれません。

しかし、市長の提案をそのまま認めるだけでは、市議会の役割を十分に果たしているとは言えません。

市民から預かった税金が適切に使われるのか、本当に必要な事業なのか、将来に過度な負担を残さないかを確認することは、市議会の大切な仕事です。

一方で、市長に反対すること自体が目的になってもいけません。

市民に必要な政策には賛成し、課題があれば改善を求め、より良い案を提案する。

必要なのは、なれ合いでも対立ありきでもなく、適度な緊張感を持った建設的な関係です。

市長だけを選べば、市政は変わるのか

市長は、市政の方向性に大きな影響を持っています。

そのため、市長選挙が重要であることは間違いありません。

しかし、市長が掲げた政策も、予算や条例について市議会の議決を経なければ、原則として実施できません。

反対に、市議会議員が政策を提案しても、市長や行政が実施へ向けて動かなければ、実現が難しい場合があります。

市長だけでも、市議会だけでも、市政は十分に機能しません。

市長が示す方向性と、市議会による審議、決定、監視、政策提案の両方が必要です。

有権者も、首長と議員の違いを知る必要がある

候補者側が、自分にできることと、できないことを正しく説明することは重要です。

同時に、有権者の側にも、首長と地方議員の役割が異なることを知っていただく必要があります。

市長選挙では、市政をどの方向へ進め、行政をどのように動かしていくのかを託す代表を選びます。

市議会議員選挙では、市長や行政の提案をどのような視点で審議し、どのような市民の声を届け、どのような政策を提案するのか、その役割を担う代表を選びます。

地方議員の政策は、首長の公約とまったく同じ意味ではありません。

しかし、議員が何を考え、何を重視し、議会でどのように行動するのかを知るために、政策は必要です。

市長を選ぶ一票も、市議会議員を選ぶ一票も大切

市長と市議会議員は、どちらも市民が直接選ぶ代表です。

市長選挙だけに関心を持ち、市議会議員選挙への関心が低ければ、二元代表制の一方が十分に機能しなくなる可能性があります。

市長を選ぶ一票は、市政を動かす代表を選ぶ一票です。

市議会議員を選ぶ一票は、その市政を審議し、決定し、監視し、必要な政策を提案する代表を選ぶ一票です。

どちらも、本庄市の未来を形づくる大切な一票です。

まずは、市長と市議会が上下関係ではなく、それぞれ市民から選ばれた代表であることを知っていただきたい。

そして、候補者が掲げる政策についても、「その人が直接実行できるのか」だけでなく、「議員としてどのように提案し、審議し、判断するのか」という視点から見ていただけたらと思います。

政治を一部の人だけのものにしないために、これからも市議会や地方自治の仕組みを、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。

次回は、「市議会議員は普段、何をしているのか」をテーマに、議会開催中だけでは見えにくい議員活動についてご紹介します。

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著者

出牛 じゅんいち

出牛 じゅんいち

選挙 本庄市議会議員選挙 (2026/01/25) [当選] 1,055 票
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肩書 本庄つむぎの会 代表 IT関連企業 勤務
党派・会派 無所属
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