2026/7/24
こんにちは。関市議会議員の北村隆幸です。 専門は、中間支援センターにて、市民活動や地域づくり、自治会等のコミュニティ支援をしています。
地方のまちが人口減少を語るとき、必ず出てくるフレーズがあります。「若者、とくに若い女性の転出が多い」。関市も例外ではありません。
でも、都会で働く同郷の女性に話を聞くと、こんな声を耳にすることがあります。
「本当は地元に帰りたい。でも、私がやりたい仕事が、地元にはないんだよね」
もちろん、全員がそう思っているわけではありません。都会での暮らしそのものを選ぶ人もいますし、地元に強い思い入れがない人もいます。それでも、こういう声は確かにある。出ていきたくて出ていくわけじゃない。帰りたい気持ちはあるのに、帰れない。そんな人がいるのなら、その“すれ違い”をどう解くかは、考える価値があると思うのです。
私はこれまでも、人口減少という大きな課題に、いろいろな角度から向き合ってきました。高校生の地元就職、若者の定着――。そして今回は、「女性」という視点から考えてみます。今日はそんな話です。
いちばん伝えたいことから書きます。
「若い女性の転出を止めたい」なら、本当に向き合うべき相手は、20代・30代の若い世代の女性(これから働く場所を選ぶ世代)です。ところが、いまのまちの施策は、そこに届いていない。
そして、その世代の女性が働きたいと思える仕事――たとえばクリエイティブな仕事――が、関市にはまだ少ない。だから帰れない。ここに手を打たないと、いくら「女性活躍」を掲げても、人口減少という目標にはつながりにくいのです。
なぜそう考えるのか、順番にお話しします。
関市では、女性・若者の活躍を重点事業に掲げ、「SEKI WOMAN FESTA」や就労セミナー、働きやすい職場の啓発などに取り組んでいます。どれも大切な取り組みで、否定するつもりはまったくありません。
ただ、これらの多くは、いま関市に住んでいる女性や、出産・子育てを終えて再就職を目指す女性への支援です。
でも、「転出を止めて転入を増やす」ことを目標にするなら、本当に考えるべき相手は違うはずです。それは、まだ関市を出るか残るか決めていない、あるいはこれから戻ってくるかもしれない、20代・30代の、これから働く場所を選ぶ若い世代の女性たち。いまの施策は、ここをターゲットにできていない。私はそこに、いちばんの“論理のすれ違い”を感じています。
ここで、少しデータの話をさせてください。政策は、感覚ではなく数字から考えるべきだからです。
令和6年に関市を転出したのは、男性1,229名、女性1,057名。年代別に見ると、20代の転出は男性570名・女性494名で、その理由のトップは「職業上の理由」(男性325名、女性204名)でした。20代のおよそ半数が、仕事を理由に出ていっているのです。行き先も特徴的で、20代の転出超過先は男女ともに名古屋市と岐阜市が中心。女性は名古屋市へ51名、岐阜市へ28名が超過して流れています。
30代になると景色が変わります。転出は男性211名・女性171名。30代女性では、職業上の理由(50名)と並んで「結婚」を理由にした転出(46名)が多くなります。ただ、結婚で出ていく46名に対し、結婚で入ってくる女性も42名とほぼ同数。つまり、結婚を機に「関に住もう」と選んでもらえるかどうかが、勝負どころだと分かります。
実は、調べていて私自身の思い込みが揺らいだ場面もありました。「女性のほうが多く出ている」と思い込んでいたのですが、直近3年(2022〜2024年)の累計で見ると、むしろ男性の転出のほうが多い。女性の流出は、少し落ち着いてきているのかもしれません。富岡の区画整理で関に家を建てて住む人が増えたことも、影響しているのかもしれません。
とはいえ、5年単位(2015〜2019年、2020〜2024年)で見ると、どちらもやはり女性の転出が上回っています。近隣の市と比べても、関市は女性の移動率が高い。だから課題は依然として残っている、という前提で考えます。大事なのは、こうやって数字を見ながら、思い込みを一度手放すこと。関市のデータダッシュボードは表彰も受けました。その強みを、もっと政策づくりに生かしたいところです。
では、なぜ仕事を理由に出ていくのか。
国の調査では、東京圏へ移り住んだ女性が地元を離れた理由のトップは「希望する職種の仕事が見つからなかったため」でした。関市も、おそらく同じ状況にあります。
ここで手がかりになるのが、2022年に十六総合研究所がまとめた提言書「女子に選ばれる地方」です。全国的に、若い女性はクリエイティブ産業に就く人が多い、と指摘されています。クリエイティブ産業とは、写真・動画、チラシやWebのデザイン、SNS発信や編集、イベント運営、ECサイト運営、ITやシステム管理といった仕事です。私が都会で会った同世代の女性たちも、まさにこういう職種の人が多かった。
ところが、関市にはこうした仕事が驚くほど少ない。市内の「情報通信業」は、事業所が15、働く人はわずか35人(うち女性は10人)です。刃物やものづくりに代表される製造業が中心の産業構造で、女性が望む事務・サービス・クリエイティブの仕事の受け皿が細いのです。事務仕事やサービス業の多い名古屋市に、女性の転出がいちばん多いのも、これを裏づけています。
では、クリエイティブな仕事は本当に「ない」のか。調べていくと、もっと根の深い問題が見えてきました。
まちが、自分たちの仕事を市外に出してしまっているのです。
市が発注する業務の入札状況を見ると、情報通信関連の業務は市内業者ゼロで市外10社、計画コンサルティング業務も市内ゼロで市外12社。デザインを含む印刷業務でこそ市内業者が入りますが、専門性の高いクリエイティブ業務は、ほぼまるごと市外へ流れています。
これでは、鶏が先か卵が先か、です。市内に仕事の依頼がないから事業所が育たない。事業所がないから、また市外に出す。この悪循環を、どこかで断ち切らないといけません。
とくに計画コンサルティングについては、私はかねてから「関市は簡単にコンサルに投げすぎだ」と感じてきました。きれいな計画だけ作って去っていき、実際に動く市民とは形だけの会議。それよりも、市民と一緒に作り、その間をつなぐ役を市内の事業者が担いながら計画をつくるほうが、次の行動につながる“生きた計画”になります。仕事を市内に出すことは、地域の事業者を育てることであり、女性の働き先を増やすことでもあるのです。
こうした現状を踏まえて、私はこう変えていきたいと考えています。
一つ目は、この若い世代の女性(これから働く場所を選ぶ世代)をターゲットにした就業施策を、はっきり始めること。まずは、その世代が本当に望む仕事は何なのか。高卒で働く女性、大卒で働く女性、それぞれのニーズを調べるところから。
二つ目は、女性が望むクリエイティブ産業を、まちに増やすこと。IT企業などの誘致に加えて、市内の刃物・ものづくり企業が社内に抱えるデザインや広報、マーケティングといった“内製化されたクリエイティブ業務”に光を当て、そこへの就労や採用を支援する。仕事は、意外と市内にすでに潜んでいます。
最近、こんな出会いがありました。ある刃物メーカーさんのX(旧Twitter)や動画の発信がとても上手だったので、思わず「どうやっているんですか」と聞いてみたんです。すると、数年前に入社した若い女性社員が担当になって、どんどん形にしてくれているとのことでした。まさに、内製化されたクリエイティブ業務そのもの。こういう仕事と人が、まちの中にちゃんと息づいているのです。あとは、それを「関市で働ける魅力的な仕事」として、もっと外に見せていけるかどうかです。
三つ目は、市自身が、仕事を簡単に外へ出さないこと。発注の仕方を工夫し、市内の事業者に受注のチャンスを回しながら、地域の担い手を育てていく。
この方向性については、まちも動き始めています。来年度に予定される「副業人材マッチング事業」で市内に足りない専門人材(とくにクリエイティブ人材)をつなぐこと、地域産品のブランディングを手がけるIT事業者を市内に誘致したこと、そして「製造業にこだわらず、女性の雇用拡大につながる企業誘致を進める」という前向きな姿勢が示されました。大きな一歩だと受け止めています。
以前、関の刃物メーカーで働く人に、こんな話を聞きました。「このハサミが好きだから、どうしてもここで働きたい」。そう思って、遠くから移住してきたというのです。
人を惹きつける“引力”を持った企業は、関にも間違いなくあります。移住してきた個人への支援制度はあっても、そうやって都会から人を呼び込める企業を後押しする制度は、まだありません。そこにも、手を打つ余地があると思っています。
「帰りたいけど、やりたい仕事がない」。 このすれ違いを、「帰りたいから、帰れる」に変えていく。そのために、狙うべき相手を見定め、まちに“働きたい仕事”を増やしていく。データを片手に、これからも具体的に提案を続けます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

参考文献
株式会社十六総合研究所「地方からジェンダーギャップの解消を目指せ ― 女子に選ばれる地方へ」(2022年)
この記事は、令和7年第1回関市議会定例会(令和7年3月)での一般質問「女性の転出に関わる産業の対策について」をもとに、北村隆幸が書き起こし再編集したものです。
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