2026/5/13
「モームリ」はもぐりですから。

今年2月に退職代行事業「モームリ」を運営する株式会社アルバトロスが摘発され代表者である谷本慎二氏が弁護士法違反で逮捕された。4月23日、谷本氏に代わり浜田優花氏が代表取締役に就任し退職代行事業を再開したことが話題になっている。アルバトロス社は退職代行モームリのサービス自体に関する司法判断が示されたものではなく弁護士からの紹介料の受領に関して起訴されたものであるとして退職代行サービスに関しての違法性は認めていない。東京商工リサーチが実施した退職代行に関する企業向けアンケート調査では弁護士や労働組合以外の退職代行業者から連絡があって30.4%の企業が、非弁行為が含まれる可能性があり取り合わないと回答している。退職代行業者と企業と認識の隔たりは依然として大きいことが窺える。
本来、退職は労働者の自由意思に基づく基本的権利であり法的には極めてシンプルな行為である。それを第三者に委ねる需要が拡大している背景には職場における同調圧力、ハラスメント、長時間労働といった企業固有の問題がある。退職を言い出せない状況そのものが健全な雇用関係ではない。退職代行は問題の原因ではなく結果である。その「結果」として生まれたビジネスは法的に不安定な基盤の上に成り立ってきた。弁護士資格を持たない民間業者は弁護士法第72条により交渉行為を厳しく制限されている。許されるのは退職意思の伝達という極めて限定的な行為にすぎない。しかし、現実のサービスでは有給消化や未払い賃金などに踏み込む交渉が横行してきた。モームリを運営するアルバトロス社が問題になったのは非弁行為を回避するための「非弁提携」という手法である。すなわち、利用者を弁護士に紹介し、その対価として金銭を受け取る仕組みだ。これは、単なる紹介の範囲を超えれば違法となる。形式的に名目を変えたとしても実質が報酬目的であれば違法性は免れない。退職代行ビジネスがグレーゾーンにとどまれない段階に入っていたことになる。
合法的な枠内でこの事業は成立させることは厳しい。民間業者に許されるのは「伝言サービス」に近い機能であり付加価値は希薄である。価格競争に陥りやすく持続的な収益確保は容易ではない。一方で交渉機能を持つ労働組合法に基づく労働組合型や完全な代理権を有する弁護士型は法的安定性とサービス価値の両面で優位に立つ。今回の事件を契機に市場がこれらの主体へ収斂していく可能性は高い。
企業側の対応にも変化が見られる。代理権の有無を厳格に確認し、民間業者からの連絡には応じない、あるいは本人への直接連絡を求める動きが強まっている。これは法的には合理的な対応だが労働者が再び職場との直接対峙を余儀なくされる場面も増えうる。制度と現場のギャップは依然として埋まっていない。退職代行ビジネスは淘汰の局面へと移行しつつあるが需要が消えるわけではない。むしろ、問題の本質に手を付けない限り形を変えて存続し続けるだろう。問われているのはサービスの適否ではなく、日本の労働環境そのものなのである。
#退職代行 #モームリ #非弁行為
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>坂本 雅彦 (サカモト マサヒコ)>伝言サービスにしか過ぎない退職代行事業の収益性は限定的