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おいだ 昌克 ブログ

郵政民営化は何だったのか

2026/5/17

「郵政民営化」は、いったい何だったのか

日本郵政の根岸一行社長が、郵便料金について「早ければ2027年度中にも値上げを行いたい」と述べたとの記事を読んだ。はがきや定形郵便物などを平均20円程度引き上げることを想定しているという。
正直に言えば、「またか」と思った。
つい最近、2024年10月に、通常はがきは63円から85円へ、定形郵便物は84円・94円から50グラムまで一律110円へと値上げされたばかりである。現在の料金表を見ても、通常はがきは85円、定形郵便物は110円となっている。
もちろん、郵便物が減っていることは分かる。メール、LINE、SNS、電子請求書、電子申請。世の中は確実にデジタルへ移っている。日本郵政の新中期経営計画でも、「郵便物数が減少する中で、持続可能な集配体制を構築する」として、集配拠点を約3,200拠点から約2,700拠点へ、約500拠点集約する方針が示されている。
しかし、だからといって、郵便料金を短期間に何度も上げてよいのか。ここには、単なる企業経営の問題を超えた、公共インフラの問題があるように思う。
私自身も、郵便料金の値上げを実感している一人である。後援会に入会してくださっている方々へ、これまで活動報告書を郵送していた。議会で何を質問したのか、どんな活動をしているのか、市政の動きをどう考えているのか。それを紙で届けることは、私にとって大切な政治活動であり、住民との接点でもあった。
ところが、郵便料金が上がってから、その送付を中断せざるを得なくなった。
たかが数十円、されど数十円である。1通なら小さな金額でも、何百通、何千通となれば大きな負担になる。これは政治家に限った話ではない。自治会、地域団体、福祉団体、同窓会、商店会、NPOなど、まだまだ紙で情報を届けなければならない現場は多い。デジタルで届く人もいれば、紙でなければ届かない人もいる。
つまり郵便料金の値上げは、単なる「利用者負担の増加」ではない。地域のつながり、住民への情報提供、民主主義の足腰にも影響する問題なのである。
あらためて思う。郵政民営化とは、いったい何だったのか。
郵政事業は2007年10月1日に民営化され、日本郵政グループが発足した。当時、日本郵便は「安心感」と「信頼感」を大切にしながら、新しい「ユニバーサル」サービスを創造していく企業グループを目指すと説明していた。
しかし、現実にはどうか。
郵便という全国一律の公共サービスを維持しなければならない。一方で、株式会社として利益も求められる。株主還元も求められる。日本郵政の新中期経営計画では、2028年度の郵便・物流事業の営業利益目標について、郵便料金改定の有無により「1,730億円の赤字から230億円の黒字」まで幅を持たせている。さらに、総還元性向50%以上、累進配当の導入も掲げている。
もちろん、企業である以上、経営努力や収益確保は必要である。しかし、全国どこに住んでいても手紙が届く、はがきが届く、地域の郵便局があるという仕組みは、そもそも市場原理だけで成り立つものなのだろうか。
都市部だけなら効率はよい。人口密度の高い地域だけなら採算も取りやすい。しかし、郵便の本質はそこではない。山間部でも、離島でも、過疎地でも、同じ料金で、同じように届く。その「あたりまえ」を守るためにこそ、郵便は公共インフラであったはずだ。
さらに気になるのは、料金改定の仕組みである。今国会の郵便法改正案では、定形郵便物の料金上限について、これまで総務省令で定めていた制度を、日本郵便の申請に基づき総務大臣が認可する制度に改める内容が示されている。法案の理由にも、日本郵便が経営環境の変化に応じて機動的に料金を変更できるようにするため、とある。
これは、経営の柔軟性という意味では理解できる。しかし、利用者から見れば、値上げへのハードルが下がるようにも見える。公共料金である以上、単に「赤字だから値上げします」ではなく、なぜその金額なのか、どこまで合理化したのか、国はどのように責任を持つのか、丁寧な説明が必要である。
私は、いまからでも公営化に戻せないものだろうか、と思う。
もちろん、単純に昔の国営郵便に戻せばすべて解決する、というほど話は簡単ではない。人口減少、デジタル化、人件費や燃料費の上昇という構造的な問題は、国営であっても避けられない。だが、少なくとも「郵便は単なる一企業のサービスなのか、それとも国民生活を支える公共インフラなのか」という根本の議論は、もう一度やり直すべきではないか。
必要なのは、懐古ではない。再設計である。
例えば、全国一律サービスを維持するための公的負担を明確にする。過疎地や高齢者に不可欠な郵便サービスについては、国が一定の責任を持つ。自治体や地域団体が住民に情報を届ける郵送については、公共的活動として軽減措置を検討する。デジタル化を進めるにしても、紙の情報が必要な人を置き去りにしない制度をつくる。
「民営化すれば安くなる、便利になる、効率的になる」と言われた時代があった。しかし、いま私たちが見ているのは、値上げ、拠点集約、人員削減、そして利用者負担の増加である。これは果たして、当初描かれた「新しいユニバーサルサービス」の姿なのだろうか。
郵便ポストの赤い色を見ると、私はいつも安心感を覚える。あの赤は、単なる企業カラーではない。遠く離れた人に思いを届ける色であり、地域と地域を結ぶ色であり、社会のすみずみにまで公共が届いているという象徴の色である。
郵便料金の値上げは、家計や団体運営への負担にとどまらない。
それは、私たちの社会が「公共」をどこまで市場に委ねるのか、そして、もう一度どこまで取り戻すのかを問うている。
郵政民営化は成功だったのか。
少なくとも今、胸を張って「成功だった」と言える人は、どれほどいるのだろうか。

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著者

おいだ 昌克

おいだ 昌克

選挙 大垣市議会議員選挙 (2023/04/23) [当選] 1,960 票
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