2026/7/15

京都府亀岡市を訪問し、スマート農業による有機米プロジェクトについて視察してきました。
テーマだけを見ると、少し専門的に感じるかもしれません。
「スマート農業」
「有機米」
「オーガニックビレッジ」
「みどりの食料システム戦略」
こうした言葉が並ぶと、農業関係者向けの話のようにも見えます。
しかし、今回の視察で私が強く感じたのは、これは単に農業技術の話ではないということです。
むしろ、市民の皆さんにとって身近な、学校給食の話でもあります。
子どもたちが毎日食べる給食のお米を、地域の農業を支える仕組みにできないか。
給食を通じて、子どもたちが地元の農業や環境について学ぶ機会にできないか。
そして、米どころである秋田市でも、次世代の農業を支える新しい仕組みを考えられないか。
今回の視察は、そうした問いを考えるきっかけになりました。
亀岡市は、京都市の西隣にあるまちです。
京野菜の産地としても知られ、水稲を中心とした農業も行われています。
一方で、亀岡市でも農業従事者の高齢化や担い手不足は大きな課題となっています。
そうした中、亀岡市は「環境先進都市」を掲げ、プラスチックごみゼロ、有機農業、学校給食、スマート農業を結びつけた取組を進めています。
その一つが、有機米を学校給食に供給するプロジェクトです。
亀岡市では、令和3年度から学校や保育所などの給食に有機米を供給する取組を始めました。
最初はごく小さな規模からのスタートでした。
令和3年度の収量はわずか0.2トン、給食に必要な量に対する充足率は0.3%でした。
しかし、取組を続ける中で、令和6年度には収量48.2トン、充足率73.0%まで拡大しています。
つまり、いきなり大きく始めたのではなく、試行錯誤を重ねながら、少しずつ給食への供給量を増やしてきたのです。
有機農業というと、多くの方が「環境に良さそう」「安心できそう」という印象を持つと思います。
一方で、実際に生産する農家にとっては、簡単な話ではありません。
特にお米の場合、農薬や除草剤に頼らない栽培では、雑草対策が大きな課題になります。
除草剤を使わなければ、雑草が増え、収量が下がるリスクがあります。
収量が下がれば、その損失は農家が負うことになります。
また、有機農業に取り組む農家が地域に少なければ、ノウハウも共有されにくくなります。
視察先で印象的だったのは、担当者の方が、有機農業が増えない理由を「農家の意識の問題ではない」と説明されていたことです。
問題は、農家のやる気ではなく、リスクを農家だけが背負う仕組みにあります。
有機農業を広げるには、農家に「頑張ってください」と言うだけでは不十分です。
販路、技術、財源、ノウハウ、地域の支援体制を一緒に整える必要があります。
この視点は、秋田市で考える場合にも非常に重要だと感じました。
亀岡市では、有機米栽培の負担を減らすために、スマート農業技術を導入しています。
ここでいうスマート農業とは、単に「最新の機械を入れる」という話ではありません。
有機米づくりで大きな負担となる水管理や雑草対策を、センサーや自動制御の仕組みによって軽減しようとするものです。
視察では、「フィールドマイスター」というシステムについて説明を受けました。
田んぼに設置した機器が、水位や気温などを測定し、通信回線を通じてデータを送ります。
そのデータをもとに、水位管理などを自動で制御する仕組みです。
また、水を電気分解して、稲の根が呼吸しやすい水を供給することで、稲の生育を助ける効果も期待されています。
特に興味深かったのは、雑草対策への活用です。
田植え前にあえて雑草を先に発芽させ、それを処理してから田植えを行うことで、その後の雑草発生を抑えるという考え方です。
これは、完全な有機栽培だけでなく、まずは減農薬から始める場合にも応用できるとのことでした。
ここが大切です。
有機か、慣行栽培か。
ゼロか、百か。
そうした二択ではなく、環境への負荷を少しずつ減らしていく段階的な取組として考えることができます。
有機米を作っても、それを安定して買ってくれる先がなければ、農家は安心して取り組めません。
そこで亀岡市が活用しているのが、学校給食です。
学校給食は、毎日一定量の食材を必要とします。
つまり、地域の農産物にとっては、安定した販路になり得ます。
ただし、学校給食への導入は簡単ではありません。
亀岡市でも、最初は収量が少なく、外部の炊飯業者が求める最低ロットに届かなかったため、一括の給食ラインには乗せられませんでした。
そのため、最初は小規模な小学校で、簡易的な炊飯設備を整えて、モデル的に有機米の提供を始めたそうです。
この話は、とても現実的で参考になりました。
「良い取組だから、すぐ全校でやろう」という話ではないのです。
実際には、収量、保管、精米、炊飯、配送、給食センターの運用、委託業者との調整など、細かな課題があります。
だからこそ、小さく始めて、課題を確認しながら広げていくことが大切です。
市民の皆さんにとって、最も気になるのは、やはりお金の話だと思います。
有機米は、通常のお米より生産に手間がかかります。
そのため、給食で使う場合、慣行栽培米より価格が高くなる可能性があります。
では、その差額を誰が負担するのか。
保護者の給食費に上乗せするのか。
市が負担するのか。
国の補助金を使うのか。
ふるさと納税などの外部財源を使うのか。
ここを曖昧にしたまま進めると、持続可能な取組にはなりません。
亀岡市では、有機米と通常米の価格差について、保護者負担に転嫁せず、市が負担しているとのことでした。
当初は国の交付金を活用し、その後はふるさと納税の寄附金を基金に積み立て、給食食材費の差額に充てているそうです。
これは、非常に重要なポイントです。
「子どもたちに良いものを食べさせたい」という思いだけでは、政策は続きません。
どの財源で、どれくらいの期間、どの規模まで支えるのか。
そこまで設計して初めて、現実的な政策になります。
秋田市で考える場合も、ここは避けて通れません。
秋田市は、言うまでもなく米どころです。
だからこそ、学校給食と地元の米づくりをどう結びつけるかは、大きな可能性を持っています。
ただし、亀岡市の取組をそのまま秋田市に当てはめればよい、という話ではありません。
秋田市には秋田市の農業構造があります。
既存の稲作農家、JA、集荷や流通の仕組み、給食センターの運用、冬季の気候条件など、考えるべきことは多くあります。
また、有機米を強く打ち出しすぎると、慣行栽培をしている農家の皆さんが「自分たちの農業が否定された」と感じる可能性もあります。
私は、そこは十分に注意すべきだと思います。
これは、これまでの米づくりを否定する話ではありません。
秋田市の米づくりの価値を、次の世代にどうつないでいくかという話です。
そのため、秋田市で検討するなら、いきなり全校導入を目指すのではなく、まずは小さく始めるのが現実的です。
たとえば、
こうした段階的な進め方が必要だと考えます。
今回の亀岡市の視察で、最も印象に残ったのは、学校給食を単なる食材調達として見ていないことでした。
給食を、地域農業を支える仕組みにする。
給食を、子どもたちが地域の農業や環境を学ぶ機会にする。
給食を、農家の新しい挑戦を支える安定した販路にする。
そうした発想がありました。
秋田は、全国に誇る米どころです。
だからこそ、私は、学校給食と地域の米づくりをもっと結びつける可能性があると思います。
もちろん、課題はあります。
有機米の価格差をどうするのか。
給食費への影響をどう考えるのか。
安定供給できるのか。
農家の負担をどう減らすのか。
既存の米づくりとの関係をどう整理するのか。
簡単な話ではありません。
しかし、だからこそ、最初から大きな制度を作るのではなく、小さなモデル事業から始め、検証しながら広げることが大切です。
学校給食を、単なる食事ではなく、地域農業の未来を支える仕組みにできないか。
子どもたちが、秋田の米を食べながら、秋田の農業を知り、地域を支える心を育てることはできないか。
米どころ秋田市だからこそ、このテーマは、じっくり考える価値があると感じました。
今回の視察を、秋田市における農業、教育、環境、そして子どもたちの未来をつなぐ政策づくりに生かしていきたいと思います。
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ホーム>政党・政治家>藤田 まこと (フジタ マコト)>給食が地域農業を支える仕組みに|亀岡市視察から考える(調査レポート26-02)