2026/6/9
週刊yasushi第1045号
「石油備蓄とナフサ備蓄」
国家石油備蓄の制度がスタートしたのは1978年のことだ。折しも第二次石油ショックが世界を揺るがしていた時代である。その財源を確保するため、政府は「石油税」という新税を創設した。エネルギーの安定供給のために増税をためらわない——そんな政治の力強さを、当時の決断に感じる。
ナフサについても、かつては石油備蓄法のもとで備蓄が義務付けられていた時代があった。しかし1993年、業界からの強い要望を受けて、その備蓄義務は廃止された。背景には、割高な国産ナフサの購入と重い備蓄コストが日本の石油化学業界の国際競争力を著しく損なっているという現実があった。規制を緩和してコストを下げる——その判断も当時としては合理的だったに違いない。
ただ、ナフサは揮発性が高く長期保存に適さないという物理的な制約がある。企業が手元に置くのは、日々の操業をつなぐだけの量にとどまらざるを得ない。
今年、ホルムズ海峡の事実上の封鎖という事態が現実のものとなった。原油の国家備蓄は約250日分あるのに、ナフサの在庫は封鎖直後にはわずか20日分という状態だった。政府は中東以外からの代替調達を急速に拡大し、川中製品の在庫も活用することで、現在は年を越えて供給を継続できる見通しを立てている。しかし「備蓄放出でもナフサには届かない」という制度の盲点が一気に露わになったことは事実だ。
エネルギーの安全保障は、平時には重荷に見える制度の積み重ねで支えられている。78年の石油税創設という政治の決断を振り返るとき、今の私たちに問われているのは何かを、改めて考えさせられる。
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