2026/6/8
先週末に発表された米国の5月雇用統計が市場予想を上回る強い結果となった。FRB(米連邦準備理事会)の利下げ期待は一段と後退し、米国の長期金利は上昇。ドル買いが進み、為替市場では再び円安圧力が強まっている。
週末、日経平均先物も大きく下落した。週明けの東京市場は大荒れになる可能性が高い。
一日に日経平均株価が数千円動くと「暴落」と受け止められがちだが、5月以降の株価上昇を考えれば、一定の調整は自然なことだ。株価の上昇幅を考えると、調整がしばらく続く可能性もあるが、私は株価についてはそれほど心配していない。
AIは確実に世界の経済と社会を抜本的に変える。相場の上下はあっても、長期的には世界経済を押し上げる力になるだろう。
私が最も気になっているのは為替の動向だ。
ゴールデンウィーク前後、日本政府・日銀は史上最大規模の為替介入を行った。しかしドル円は再び160円近辺まで戻ってきた。
市場のトレンドそのものを変えなければ、介入だけで流れを止めることはできない。円安がさらに進めば、補正予算による物価高対策など吹き飛んでしまう。
先日、閉店間際のスーパーで弁当を買う機会があった。数個だけ残った見切り品の弁当を前に、中身と値札を真剣な表情で見比べている男性たちがいた。
妻にその話をしたら、「そんなの普通だよ」と言われた。確かにそうなのだろう。しかし、彼らの表情を思い出すと、物価高が国民生活に与えている影響の大きさを感じずにはいられなかった。
購買力平価で見ると、円の価値はおよそ100円程度と言われる。「100円」の価値があるはずの円が、市場では160円近く出さないと1ドルと交換してもらえない。
もちろん市場レートと購買力平価はイコールではない。しかし、外貨から見た円の価値が本来の水準より大きく低下していることは事実だ。
これは単なる為替の問題ではない。日本経済に対する評価の問題であり、国力の問題だ。円安を根っこから止めるには、日本経済のファンダメンタルズを強化する以外にない。
まず問題になるのは日米金利差だ。
米国ではエネルギー価格の上昇などもあり、利下げは遠のいている。一方で日銀は来週、金融政策決定会合を開く。
植田総裁は最近の講演で物価上振れリスクへの警戒感を示しており、市場では追加利上げ観測が強まっている。
今一つ気になるのは長期金利の動向だ。プロの世界である債券市場は株式市場以上に冷静で厳しい。
40年国債の利回りが10年国債を大きく上回っている現状は、日本政治の財政規律に対して市場が警戒感を強めていることを示している。
物価高に苦しむ国民を考えれば、ガソリンや電気代への支援は理解できるが、更なる円安と金利上昇になると、結果として国民生活を苦しめることになる。
政府が掲げる17の成長分野の方向性は間違っていない。
問題は実行力。そして、その基盤となるのがエネルギー政策だ。AI、データセンター。これからの経済成長は安定した電力供給なしには成り立たない。
本日、官邸で高市総理に対して原子力規制の抜本改革を提案してきた。原発事故対応の当事者として規制改革を担い、その後、自民党で原子力政策に携わってきた政治家は私以外にいない。事故後の規制改革を知り、その後の現場も見てきたからこそ提案できる改革がある。
エネルギー政策を強化することは、長期的に日本の産業競争力を高めるだけではない。短期的にも、「日本は構造改革を進める国だ」という強いメッセージを市場に発することでもある。
最後に、経済成長を実行するために必要なのは人だ。使い古された言葉だが、資源の乏しい日本にとって最大の資源は人材だ。
私が長年、教育格差の問題に取り組んできたのは、社会的な不公正を是正するためだけではない。子どもたちへの教育投資は最も重要な成長戦略でもある。
このことについては、改めて詳しく書きたい。
――翻って、今回のテーマである円安も、物価高も、金利も、突き詰めればすべてこの「国力」の問題に行き着く。
市場は時に厳しい。しかし、市場は現実を映す鏡でもある。
市場の教訓を正面から受け止めながら、この国の成長力を高めるために、やれるだけのことをしたい。
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